アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.222, L.12】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.222 L.12 (補題10*eについて) X



ER→VRの証明

  • 「ERが満たされている」と仮定して議論が開始されました
  • ER(定義10*3, P.208)は,各個人がxIyのような無差別的な選好関係を含んでいる場合にも成立します。(定義10*3の式の→の左辺がもともと成立していないため,定義式全体としては成立します。)
  • ですが,反対称性を前提しているので(個人的選好の中にxIyのような無差別関係は存在していないので),ここでそのようなケースを考える必要はありません。
  • ここで「ERが満たされている」とは,xPyPzのような個人が実際に存在し,かつERの→の右辺(∀i:zPix →zPiy & yPix)も成立している状況です。
  • (一般性を失うことなく),ある個人iについてxPiyPizであると仮定しました。(ERより,∀i:zPix →zPiy & yPixです。)
  • zPixのような個人がいる場合といない場合に分けて考えます。
  • zPixのような個人がいない場合
    • 反対称的な順序の場合(Iがない場合)〜(zPix)→xPizです。(xとzの間には,もともとxPiz, xIiz, zPixの3ケースしかなく,反対称的な場合はxIizが除かれているためです。)
    • よって,全個人がxPizを満たすことになります。
    • このとき,zは誰の順序においても「最良でない」ため,VRが満たされることが判ります。
  • zPixのような個人(よってzPiy & yPixのような個人)がいた場合
    • この個人を前提に,もう一度ERを適用して考えると,xPizを満たす全ての個人はxPiyPizでなければなりません。
    • つまり,∀i:zPix→zPiyPix,かつ,∀i:xPiz→xPiyPizが確認されました。
    • ところで,反対称的な場合は,もともと∀i: xPizzPixでした。 (xとzの間にはxPiz, xIiz, zPixの3ケースしかなく,反対称的な場合はxIizが除かれているためです。)
    • よって,∀i: {xPiyPizzPiyPix}ということになります。
    • よって,yがどの個人においても「最良でない」(また「最悪でない」)ことが判り,VRが満たされることが確認されます。
  • 以上,いずれのケースについてもVRが満たされることが確認され,ER→VRの証明部分が終了しました。

LA→VRの証明

  • LAが満たされると仮定して議論を始めました。(一般性を失うことなく),全個人iについてxRiyであるとしました。
  • ところで,反対称的な場合は,xRiy→xPiyです。(xRiyには,もともとxIiyとxPiyの可能性がありますが,反対称的な場合はxIiyが除かれているためです。)
  • よって,全個人がxPiyということになりますが,このときどの個人においてもxは「最悪でない」ことになります。(yが「最良でない」ことにもなります。)
  • よってVRが成立ことが確認され,LA→VRの証明部分も終了しました。





本ページの概要とお願い:
  • 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の 特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
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[2015年8月15日 初版をアップ]

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