検討項目
位置 |
検討する部分 |
種別 |
訂正案, コメント |
P.221 L.22 |
(定理10*7について) |
X |
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証明手順について
- 「SWFの定義域に入る」のは,(個人的選好の布置によらず)導出される社会的選好関係が順序性(反射性,完備性,推移性)を満たすという意味でした。多数決決定法の場合,反射性と完備性が満たされるのは当然ですので,推移性の成立に着目していきます。
- ERの必要十分性のうち,まず必要性を確認していきます。(必要性の証明は「推移性が成立する」→「ERが満たされる」の証明ですが,これを対偶を取って進めています。)
- ERが満たされないとすれば,例えば,xPiyPizである個人iがおり,
同時に,「zPjxであり,かつzPjyPjxではない」個人jが別にいることになります(ERの定義(P.208)より)。
- そうした個人の選好には何パターンかありますが,zPxは固定されているので,あとはxやzに対するyの相対的な位置のみが変わりうるポイントです。
- もともとの13種類の順序のうち,zPxを含むのは,
(2.1) yPzPx, (2.3) yIzPx, (3.1) zPxPy, (3.2) zPxIy, (5) zPyPxの5ケースでした。このうち,(5)のzPyPxのパターンだけは除いて考えるのですから,可能性があるのは他の4パターンです。
- 書籍の「(1) zPjx, zPjy, xRjy」は,(3.1) zPxPy, (3.2) zPxIyのケースをまとめて表現したものです。
- 書籍の「(2) zPjx, yPjx, yRjz」は,(2.1) yPzPx, (2.3) yIzPx,のケースをまとめて表現したものです。
- さて,iとjしかいない状況での多数決を考えます。
- jが(1)の選好をもつ個人であるとすると,iとjは,yとzについては反対,xとzについても反対の選好をもつので,社会的選好としてはyIz, xIzです。また,xとyについては,xPiyかつxRjyですから,xPyになります。
- このとき,選択集合が空になるような問題は生じていませんが(xとzが選択集合に入ります),社会的選好関係は順序になっていません(xRzかつzRyなのにxRyとならず,推移性が成立していません)。
- jが(2)の選好をもつ個人であるとすると,iとjは,xとyについては反対,xとzについても反対の選好をもつので,社会的選好としてはxIy, xIzです。また,xとzについては,xPizかつyRjzですから,xPzになります。
- このときも,選択集合が空になるような問題は生じていませんが(xとyが選択集合に入ります),社会的選好関係は順序になっていません(zRxかつxRyなのにzRyとならず,推移性が成立していません)。
- 以上より,ERが満たされないと,推移性が満たされないことが確認されました。
- もともと定理10*4で十分性が示されていたことを確認して,必要十分性の証明終了となります。
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本ページの概要とお願い:
- 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の
特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
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[2015年8月15日 初版をアップ]
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