アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.217, L.21】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.217 L.21 (補題10*dについて) X



  • 直感的にも理解されますが,ここでは少し細かく確認してみます。
  • 多数決決定法は,定義5*1(P.87)で導入され,∀x, y ∈X: xRy⇔[N(xPy)>= N(yPx)]というものでした(xIy,つまりxRyかつyRxが成立するのは,右辺で等号が成立するときでした)。
  • この定義より,多数決決定法では∀x, y ∈X: xPy⇔[N(xPy)> N(yPx)]であったことになります。
  • 右辺のN(xPy)>N(yPx)が成立する場合,両辺にN(yPx)を足す計算から,
    N(xPy) +N(yPx) > N(yPx)+N(yPx)=2N(yPx)が得られます。

    一番左のN(xPy)+N(yPx)はN*に等しいので,つまり,N*>2N(yPx)です。 これより,N(yPx)/N*<1/2です。

  • さてN(xPy)をN*で割る計算を考えると,N(xPy)/N*=(N*-N(yPx))/N*=1-N(yPx)/N*>1/2が得られます。

    N(xPy)/N*>1/2ということで,つまり,多数決決定法でxPyであるときはN(xPy) > (1/2)N*です。
     (書籍には「必要である」とあり,それは正しいのですが,十分条件でもあります。)

  • さて,もともとN*<=Nなので,もし厳密な多数決ルールが成立してN(xPy)/N > 1/2であれば,もちろんN(xPy)/N* > 1/2(よってN(xPy) > (1/2)N*)も成立します。
  • 以上より,厳密な多数決ルールでxPyであれば,通常の多数決決定法でもxPyであることが確認され,証明終了となります。





本ページの概要とお願い:
  • 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の 特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
  • 本ホームページの主旨や注意などについては,こちら(「読解のポイントを探る」項目リストページ)をご覧下さい。




[2015年8月1日 初版をアップ] (最終アップデート:2015年11月23日)


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