アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.53 L.2】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.53 L.2 つねにxPyである Y3 xPyである



  • 定義3*2と定義3*3の文面は似ており,なぜ定義3*2だけ「つねに」と一言ついているのか,気になるかと思います。
  • 原文はそれぞれ以下のとおりで,定義3*3でwhenが使われている部分で定義3*2ではwheneverとなっており,「つねに」はこのwheneverの訳出と判ります。
    • 定義3*2: A set of individuals V is almost decisive for x against y if xPy whenever xPiy for every i in V, and yPix for every i not in V.
    • 定義3*3: A set of individuals V is decisive for x against y if xPy when xPiy for every i in V.
  • このように原文に対応する表現はあるのですが,ここでwheneverが使われているのは, おそらくそれが"almost decisive"というフレーズだからでしょう。このフレーズは,「ときにはdecisiveだが, ときにはそうでない」というような,場合によって変わるような印象を与えます。実際は,常に"almost decisive"という能力をもつのですから,この点を強調して(誤解を避けるために)wheneverが使われたものかと思います。
  • さて日本語では,今回「弱い決定力がある」と訳していますから,場合によって変わるような印象を与えません。そこで,「つねに」という表現は不要に感じられます。
  • 余計な疑問を生じないようにするうえでは,むしろ省いた方がよいようにも思われます。この意味で,「つねに」を省略するという訳案を考えました。





本ページの概要とお願い:
  • 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の 特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
  • 本ホームページの主旨や注意などについては,こちら(「読解のポイントを探る」項目リストページ)をご覧下さい。




[2012年2月5日 初版をアップ]


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