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検討項目
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検討する部分 |
種別 |
訂正案, コメント |
P.48 L.1 |
〔3.3の第4段落(条件Iの議論)〕 |
X |
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P.51 L.15 |
(条件Iについて) |
X |
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- P.51の条件の説明では,「属する任意の選択肢のペアについて,およびすべてのiについて xRiy⇔xRi'yならば」という条件が,ある選択肢集合について成立するならば,そのさまざまな部分集合についても成立する事情があります。その結果,「C(S, R)=C(S,R')」という結論も,Sのさまざまな部分集合に適用させて考えることができます。(選択肢集合(注目している全選択肢からなる)のさまざまな部分集合に対して,選択集合が不変になる仕組みが含まれます。)P.48からP.51への展開は,この点に注意すると判りやすくなります。
- P.48の文章説明は,自然に理解されるかと思います。「すべての個人的順序の中で(無関係な選択肢がどのように相対順序を変えても)注目している選択肢群の選好関係が不変ならば,その選択肢群に関する社会的な選好関係が不変である」ということです。
- (P.49の最後の段落から「順位評定」(ボルダ法)の投票方法がこの条件を満たさないことの説明があり,参考になります。)
- P.51の数式による定義は,一見複雑ですが,同様です。
- 「C(S,R)とC(S,R')が同一である」ということのみで,Sに含まれる全要素の(社会水準での)選好関係が同一に留まると保証されるのかどうか,気になるかもしれません。
- ですが,Sの何らかの要素間で社会的選好関係が変化した場合,Sの全ての部分集合SsについてC(Ss,R)とC(Ss,R')が同一になることはなく(どこかにずれが生じるので),この心配は不要です。
- 注目している選択肢集合Sの任意の部分集合Ssについて,書籍の条件の下でC(Ss,R)とC(Ss,R')が同一になる必要があることに注意します。このとき,Ssに2要素x, yしか含まれないような状況で,他の要素がどれほど変化しても,社会的水準でのxとyの相互の選好関係が変化しないことも主張されています。
- 社会的選好関係に変化があれば,変化のあった2選択肢からなる部分集合SsではC(Ss,R)とC(Ss,R')に差が生じます。逆に,任意の部分集合SsについてC(Ss,R)とC(Ss,R')が同一であるというならば,注目しているSの要素に関しては社会的選好関係RとR'が同一であることが保証されています。
- Sの要素間で社会的選好関係が変化したという場合,少なくともS内のいずれかの2要素間で関係の変化が生じています。
- 仮にxとyの2要素間であるとすると,もともとその2要素間の二項関係はxPy, yPx, xIyもしくは比較不可能の4種類のみですが,そのそれぞれに対して,C({x,y},R)は違うものです(xPyであればx, yPxであればy, xIyであればxとy, 比較不可能(〜(xRy)&〜(yRx))であれば空集合 )。
- そこで,RとR'で変化があったとすれば, C({x,y},R)とC({x,y},R')の間にはどうしても差異が生じます。逆に,C({x,y},R)=C({x,y},R')であるとすれば,
xPy⇔xP'y, yPx⇔yP'x, xIy⇔xI'y,〜(xRy)&〜(yRx)⇔〜(xR'y)&〜(yR'x)ということで,社会水準でのもとの選好関係が保たれています。
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例として,X = {a, b, c, α, β, w, x, y, z} として,「各個人iにおいて,RiとR'iで選好関係が全く変化しない要素の組み合わせ」を考え,それを組み合わせて集合(それはXの部分集合)を作ることを考えます。
- つまり,例えば,個人が{1, 2, 3}と3人いて,個人1がaP1b(aR1bかつ〜(bR1a)),個人2もaP2b(aR2bかつ〜(bR2a)),個人3はがaI3b(aR3bかつbR3a)であるとき,
もし,aP'1bかつaP'2bかつaI'3bであれば,{a, b}は「各個人iにおいて,RiとR'iで選好関係が全く変化しない要素の組み合わせ」ということになります。
- このあと,{b, c},{c, a}についても同様と確認できたとします。このとき,{a, b, c}はひとまとめの集合にできます。
- こうして,例えば,2つのXの部分集合 S1 = {a, b, c},S2 = {w, x, y, z}が見出されたとします。
- このとき,S1に関して,{a, b}についての選好は全ての個人iがRiとR'iで同じ。また,{b, c}も,{c, a}も同様ということです。S2についても,S1と同様のことが言えます。
- (S1の要素とS2の要素の間には,ある個人iについて,RiとR'iが異なるものがあるとします。そうでなければ,S1とS2は1つの部分集合にまとめられます。)
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このとき,社会レベルでも,S1に関して,{a, b}についての選好はRとR'で同様。また,{b, c}も,{c, a}も同様でなければいけないというのが条件Iの主張する点です。S2についても,S1と同様のことが主張されます。
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条件Iが成立するには,上記のことがS1, S2のどちらか1つで成立すればよいのでなく,S1, S2のいずれについても成立する必要があります。3つ以上の場合も同様で,いずれの部分集合についても成立する必要があります。
- また,C(S1, R) = C(S1,R')の式中のS1などは,その任意の部分集合に置き換えても成立する必要があります。
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本ページの概要とお願い:
- 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の
特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
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本ホームページの主旨や注意などについては,こちら(「読解のポイントを探る」項目リストページ)をご覧下さい。
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[2015年8月1日 初版をアップ](最終アップデート:2016年12月13日)
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