アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.26 L.9】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.26 L.9 (補題1*oについて) X



  • (a)について
    • (a)の証明部の2行目の「PPを満たさない」は,1行前の3番目が,(xPzと両立しない)zPxであるためです。
    • 「PIを満たす」の点は, まず「Pかつ IP」 と書く上で,適当なPIの組があるかどうかを考えます。
    • xIxyIyを用いない範囲で考えると) 3つの異なる要素x, y, zの間にはすべて厳密な選考(つまりP)の関係があり, 無差別(つまりI)で結ばれた関係がないので,このような組がないのは自然に理解できます。(PIの定義は,p.15の補題1*aの(2)で確認できます。「○○→××」という様式ですので,ここで前提部分の○○が成立しなければ,PI自体は満たされていることになる点に注意します。)
    • また,xIxyIyを用いるとすれば(2つの異なる要素を用いることになります), 「 zPx かつ xIxzPx」 「 xPy かつ yIyxPy 」 「 yPz かつ zIzyPz 」 の3ケースが考えられ,これらは全て成立します。
    • 結局,3つの異なる要素を用いるケースと,2つの異なる要素を用いるケースのいずれでも,PIが満たされることが確認できました。
    • (a)の証明部の3行目の「PIを満たさない」は,1行前の3番目が,(xPzと両立しない)xIzであるためです。
    • 「PPを満たす」は, (上記のPIで3つの異なる文字を用いた場合と同様に)「Pかつ PP」 と書く上で,そもそも適当なPPの組がないためです。
  • (b)について
    • 「推移性が満たされていない」という仮定から, まず「xRy かつyRz かつ〜(xRz)」 となるx, y, zが存在することになります。 (推移性の定義)
    • Rは完備なので,xRzzRxのどちらかが成立しなければなりません。前項目より〜(xRz)なので,よって zRxです。
    • zRx かつ 〜(xRz) なので, よって zPx です(Pの定義:p.14の定義1*1)。
    • xRyxPy またはxIyを 含意する」とは, 「xRy xPy またはxIy」 ということです。
      このことは,xRy = xRy and ( 〜(yRx) or (yRx) ) = (xRy and 〜(yRx)) or (xRy and yRx) = xPy or xIy のように理解できます。
      • ところが,ここで xPyとすれば, すでに zPxを得ていることと, PPを仮定していることから, zPyでなければ いけないことになります。 しかし,これは,最初に前提した yRzと矛盾します。
      • 一方,ここで xIyとすれば, すでに zPxを得ていることと, PIを仮定していることから, zPyでなければ いけないことになります。 しかし,これも同じように最初に前提した yRzと矛盾します。
    • この矛盾は推移性が満たされていないと仮定したことによると 思われることから,背理法によって,推移性が満たされていることが 証明できたと結論します。





本ページの概要とお願い:
  • 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の 特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
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[2011年6月27日 初版をアップ](最終アップデート:2017年1月5日)


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