アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.21 L.19】

dss50.org

 

検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.21 L.19 (補題1*j) X



「選択関数C(S, R)がX上で定義される」というのは,選択集合が空にならず,少なくとも1つの要素をもつということです。補題1*bに倣い,このことの証明手順を以下のように考えます。
  • Xの要素数がnで,各要素がx_1, x_2, ..., x_nであるとします。
  • a_1=x_1と置き,つぎにa_2以降をつぎの手順で決めていきます。
    • もしx_j+1Pa_jならば(つまり新しい要素x_j+1の方がa_jより上であれば),a_j+1=x_j+1とする(a_j+1としてx_j+1自体を採用する)。
    • その他の場合,つまり,もしa_jRx_j+1ならば(新しい要素x_j+1がa_j以下であるならば),a_j+1=a_jとする(a_j+1としてa_j自体を採用する)。
  • この帰納的な方法を,jを1からn-1まで動かしながら順に適用して行きます。
  • その結果として得られるa_nは,以下の理由から,選択集合に含まれなければなりません。
    • 推移性があるため,a_nは,これまで比較した全ての他の要素x∈Xについて,a_nRxを満たすはずです。
    • これに加えて,反射性があるため,a_nはa_nRa_nを満たします。
    • よって,a_nは有限集合Xの任意の要素xについて,a_nRxを満たしており,よって最良要素として選択集合に含まれることになります(選択集合の定義)。
  • 以上,選択関数C(S,R)がX上で定義されることが証明されました。





本ページの概要とお願い:
  • 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の 特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
  • 本ホームページの主旨や注意などについては,こちら(「読解のポイントを探る」項目リストページ)をご覧下さい。




[2013年5月31日 初版をアップ]


「アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く」のトップページに戻る
「読解のポイントを探る」(項目リストページ)に戻る