アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.6 L.11】

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検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.6 L.11 十分な基盤 Y3 とりあえずこと足りた基盤



  • 「十分な基盤ではあるが」は,原文ではwhile it is a sufficient basisとなっています。sufficientは通常「十分な」と訳すのですが, ここでは前後のつながりがすこし不自然に思えます。

  • このsufficientには「単に水準に達したにすぎない」というニュアンスもあると思います。

  • 例えば,小学館の『英和中辞典』(1980年版)のsufficient項目に次の注意書きがあり,参考になります: 「必要にして十分」の意味で「あり余っている(ample)」のとは異なる (例文:There is sufficient food for ten people. 10人が食べるだけの食べ物はある (他))。

  • 本書においても「十分な基盤」は,「満足できる基盤(a satisfactory basis)であろうか?」という問いへの答えなので, 「十分な」(sufficient)は「満足できる」(satisfactory)と並べてその差を指摘しているようです. この点からも,sufficientはその差が表れるような日本語を当てられるとよいと思います。

  • 「とりあえずこと足りた」は,sufficientの訳として一般的でありませんが 「単に水準に達したにすぎない」という意味が表れる表現として適当かと思いました。 (「こと足りた」のみでもよいかもしれませんが,「満足できる」と並べて差を示すうえでさらに判りやすいかと思いました。)





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[2010年11月18日 初版をアップ](最終アップデート:2010年12月18日)


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