検討項目
位置 |
検討する部分 |
種別 |
訂正案, コメント |
P.3 L.19 |
冷徹な経済官僚 |
Y3 |
冷静な経済専門員 |
- 「冷徹な」の部分は原文で"calm"です。通常は「冷静な」と訳せる単語です。
- また,ここでは税金をかけないことを主張するのですから,「冷徹な」はあいにくい気がします。(逆に「大きな税を課すのが最適である」と主張するのであれば「冷徹な」でもよいかもしれません。)
- 加えて,この人物はあとに続く「怒れる群衆」と対置させる意味で登場していると思われます。そこで,その「怒れる」と対にする観点からも「冷静な」の訳の方がよいかと思います。
- 「経済官僚」の部分は原文で"economic technician"です。そこで,必ずしも「官僚」と言い切れない面があります。
- ただ,"technician"を普通に「技術者」や「技術員」とすると,「経済技術者」や「経済技術員」となり日本語として違和感が残りそうです。また「専門家」とするとspecialistのニュアンスも入り,それは著者の意図と異なるかもしれません。
- (英語でもeconomic technicianはそれほど一般的な表現でないようですので,あえて「経済技術員」としてもよいかもしれませんが。)
- ここでは可能な選択肢のひとつとして,「専門員」の訳を考えました。
- ところで,著者は経済学者なのですから,
読者としては著者自身もこの「経済専門員」のように
議論することがあるのではないかと想像されるところです。(この「経済専門員」の話はp.229-230の(2),(4),(5)の記述などにも対応していくと思われるのですが,実際,その内容を読んでも著者自身がこの種の議論に加わる立場にある気がします。)
-
「経済専門員」の話で著者自身が思い出されることを踏まえると,technicianの語が選ばれたことも判る気がします。例えばa calm economic specialistのような表現では尊大な雰囲気になってしまう問題があり,より謙遜した表現を選んだとも考えられると思います。
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特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
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[2011年8月6日 初版をアップ](最終アップデート:2011年8月29日)
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