アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く

II.読解のポイントを探る 【P.3 L.17】

dss50.org

 

検討項目

位置 検討する部分 種別 訂正案, コメント
P.3 L.17 社会を構成する人々の欲求や欲望に関連するとしても, Y3 社会のすべての構成員の必要と欲望の全体に関連してはいるが,しかしながら,



  • 該当部分は,"... while related to the needs and desires of the members of the community, can, however, .."の原文に対応しています。
  • まず「社会を構成する人々の欲求や欲望」 (the needs and desires of the members of the community)の部分には,"全体"を意味する「the + 複数形」の構文が2つあり("the needs and desires"と"the members of the community"),意味としては「社会のすべての構成員の必要と欲望の全体」であると思われます。

    また,ここでneedsは,つづく「欲望」(desires)との違いを出すために普通に「必要」としてみました。 (needsを「欲求」と訳すのはマズローの欲求の5段階説などに対応するなどの意味でよい面もあるのですが,日本語で「欲求」と「欲望」と並ぶと差が現れにくいように思いました。)

  • 通常,この「全体」は訳出しませんが,ここではこの意味が重要と思いますので,あえてそのまま 「社会のすべての構成員の必要と欲望の全体」とする訳案を考えました。
  • 「関連するとしても」については,該当部分の構文から,基本的に「関連してはいるが,しかしながら,」と訳せる表現です。
  • (ここでは,"「集合的選択にかんする判断」は「社会のすべての構成員の必要と欲望の全体に関連する」という点では共通しているが,とりうる形式という面では非常に異なることがある"というのが文脈でしょう。)
  • 現在の訳の「関連するとしても,」は,上記の「関連してはいるが,しかしながら,」を簡略化したものと思われます。ですが,そうすると "even if" のような仮定のニュアンスが入り,「関連している」が共通した性質であるという文脈が判りにくくなる問題もあります。
  • この観点から,(仮定でなく事実として「関連している」と位置づけていること,それが共通した性質であることが判るように)そのまま「関連してはいるが,しかしながら,」と訳す方がよいように思いました。





本ページの概要とお願い:
  • 本ホームページは,Amartya Sen先生の『集合的選択と社会的厚生』(日本語版, 勁草書房)の 特定の記述項目について,読む上でのポイントを考えるものです。
  • 本ホームページの主旨や注意などについては,こちら(「読解のポイントを探る」項目リストページ)をご覧下さい。




[2011年8月28日 初版をアップ](最終アップデート:2011年8月29日)


「アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く」のトップページに戻る
「読解のポイントを探る」(項目リストページ)に戻る